セラピストにむけた情報発信



東京都福祉保健局・病院経営本部研修



2009年2月2日

1月30日に,東京都の病院・リハビリ施設に勤務されるPT・OTさんを対象とした研修会の講師を担当いたしました.

あいにくの雨のなか,80名程度のセラピストの方々にご参加いただきました.これまでの講演では20代,30代の若いの方々の参加が多かったのですが,今回の講演では比較的経験年数の長い方々が多く,いつも以上に身の引き締まる思いで講義をおこないました.

「知覚認知と身体運動の不可分性」というタイトルのもと,3時間の講演をおこない,以下のような話題をご紹介しました.

●意識経験の謎
●注意の機能
●視線と身体運動
●潜在的な運動の制御
●知覚運動制御


研修後,今回の研修をコーディネートくださいました山川邦子先生(北療育医療センター,PT),および北療育センターのスタッフの皆様と懇親する機会をいただきました.そこでは,研修にてご紹介した話題が,小児に関する臨床の問題とどのように結び付きそうかということについて,非常に有益なヒントを各先生より頂きました.

たとえば「視線と身体運動」の話題では,視線の動きと四肢の動きには強固な時間的・空間的関係があることをご紹介し,臨床場面ではこの関係がうまくいっていないことでスムーズな運動が実現できていないケースもあるのではないかというお話をいたしました.これに対して,脳性まひの幼児で適切な場所に視線が向けられないケースに対して,視線を正しく誘導するための介入をしたところ,その後の身体運動に改善がみられたことや,視線が過度に動きすぎているケースに対して,暗い部屋など,視覚刺激の少ない環境で視線の動きを一定期間抑制させると,その直後に日常空間に戻したときの視線の動きが改善され,身体運動もスムーズになるといったお話がありました.いずれも,視線への介入が運動を良くすることを示すものであります.

また「潜在的な運動の制御」の話題では,私の中心的研究テーマであります「狭い空間を通り抜ける際の知覚運動制御」について,具体的な研究内容をご紹介しました.これを受けて,脳性マヒの幼児が運動会でハシゴをくぐる際,どうしてもハシゴにぶつかってくぐることができないなど,臨床場面でも身体と空間の関係性の知覚が問題となるケースがあるというお話を伺いました.基礎的研究として行っている自分の研究が,臨床にも応用できるのだという可能性をご指摘いただき,研究へのモチベーションを高める有益な機会でありました.

セラピストの皆様との双方向的交流が,私にとっていかに重要であるかを再認識した一日でありました.


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